返信不要。
私は大学生になり、週3回、コンビニでアルバイトを始めた。
少しもたもたしていた時期を乗り越え、今は後輩もできた。
当たり障りない会話をして、仕事仲間と過ごすという日々をもって、自分は大人になったのだと感じていた。
あんな地獄のあとにでも、
容赦なく続く日常。
ぼんやりとたまにテキパキを繰り返しながら、今日も夜10時になった。
この時間の常連、
最近私が気になる人ができた。
気になる、というのは、色恋ではなく絶対にゲイな見た目。
会話らしい会話はしたことがない。
スキンヘッドに、口ひげを生やしたその人は、だいたい35歳くらいだろうか。
暑い日も寒い日も、いつも黒いポロシャツを着ている。
そして気になるのは、耳。
今となっては何も飾りをつけていないけど、
絶対に昔大きいピアスをしていたと予想できる穴が空いていて、小さい三角のような穴から向こう側が少し分かるくらい。
ピアスをしない状態でも、鉛筆なら通るだろうという大きさ。
その人はいつも、菓子パンを10個くらい買っていく。
それも、他のアルバイト仲間から聞いた話だと、ほぼ毎日だという。
世の中のゲイの原動力は、大量の菓子パンだ
という誤った情報を仕入れた私とアルバイト仲間は、その人が来たらアイコンタクトをし
帰ったらチョイスした菓子パンについてああだこうだ言う。
それがもう、日課になってきた。
彼はネタの宝庫だった。
というか、暇で平和なバイト先の風景だ。