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二人とも、
生きた糞であることは明らかだった。

生物学史上最大の事件。
糞が、ギリ日本語を話している。と思った。

そんな記念すべき糞1号はトモアキ
栄光の糞2号はモモコ。

糞2と話してみたくなった。
糞1に電話をかけさせた。



トモアキが{先輩}という表示のモモコに電話をかける

私は本来温厚な性格だ。
人前でうまく話せず、
学校でもとくに目立つことはない。
おっとりとしている。
見た目も地味だと思う。

そんな私が、派手でおそらく美人のモモコに
下剋上をしようとしている。

そんなことを考えている間に、
トモアキが電話の向こうの人物と話す。

「なんかな、話したいって言われて…」
「ごめん、ごめんな、頼むわ…」

ボソボソと。トモアキが懇願している。
糞が乾いて小さくなっている。

もう今の私に怖いものはなかった。

恐る恐るトモアキから電話を渡され、
言葉を発する。

できるだけ腹から響く声で「もしもし」
とだけ言った。

電話の向こうから、少し高い声で「もしもし」
が返ってきた。

「トモアキの彼女です」と言った。

すると、向こうから言葉の乱射が始まった。


あんた何様なのよ私よりちょっと先にトモアキと出会ったからって関係ないわ私のほうがあんたよりもずっとトモアキにお似合いしかもトモアキはあんたのこといつもパッとしなくて嫌だって言ってた暗い女だって
あと子供おろしたからって何なのよ甘えてんじゃないわよ私だって昔おろしたわよ皆が皆幸せになれないのよ自分の幸せのためなら誰かが不幸になっても厭わないわ

キャンキャン

キャンキャンキャン


車の窓を眺めながら
2本先の電信柱で小型犬が鳴いている声を聞いていた

果たしていま私は不幸なのか?
糞ふたつを目の前にして、

絶望すべきなのか?
それともこれ以上の糞はそうそうないだろうと底辺を見て、今後の私の人生に希望を持つべきなのかもしれない。

いや、私もたいがい糞だ。

肉欲に負けて
家族を疎んで
暴力に屈して
声もあげずに
ひたすら我慢して
自分で自分を傷つけて
それに気づかないふりをした

これがその結果だ。
そして、そんなことはどうでもいいのだ。

一瞬だけでも、私は あの点の子の母親だったのに。
責任もとれないのに自由ばかりを求めた代償だ。
そればかりが、悔やまれる。


そんなことを考えている間に、モモコはキャンキャン鳴き
トモアキは窓の外をみていた。


…私と同じように堕胎したことがあるなら、なぜ?

答えはひとつだった。

私は、二言目をモモコに放った。

作品名:返信不要。 作家名:もめん