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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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歪んだたより 探偵奇談4

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すっかり日が落ちて、時刻はそろそろ八時になろうとしている。伊吹は自宅のキッチンで、瑞と素麺をすすっていた。父親は単身赴任中、看護師の母は夜勤、成人した姉は結婚して家を出ており、気がねなく何事かに備えて瑞と待機していられる。初めは誘いをご迷惑だからと固辞した瑞だったのだが、もし郁と怜奈に何かあったら、ここからならばすぐに駆けつけられるからと説得した。瑞の家は街の逆側だ。何かあれば怜奈のマンションまで、ここからなら自転車で五分ほどだ。

「味気ない素麺で悪いな」
「俺素麺大好きです、ごちそうになっちゃってすみません」

素麺なんてお客人に振る舞う物でもないのだが、瑞は気にする様子もない。うまそうに素麺をすすっている。

「先輩ひとりんときは、こうやってご飯作ってるんだね。えらいね」
「適当飯だよ。素麺ばっか食べてるな、楽だからって」

暑いし、がつがつ食べられないのもある。

「須丸はじいちゃんと二人だっけ。そういやお盆休みは京都戻らないのか?」
「ばあちゃんの初盆だから、カーチャンらがこっち来るよ。そういや今週末だっけ。今年は祇園祭も行ってないし、京都にはずっと帰ってないや」

部活も忙しいし遠いし、難しいだろうと思う。しかし寂しがったり恋しがったりしていないところをみると、その忙しい日々が充実していことが伝わってくる。もとより望んで祖父のもとへやってきた瑞だから、こちらで過ごせることは幸福なのだと思う。

「ばあちゃんが夢に出てきたんだ」
「ん?亡くなった?」
「そう。俺に会いに来てくれたみたい」

箸をおいて、視線の先にある窓のそとを見つめながら瑞が言う。剥がれ落ちた夢の欠片を追うように、その瞳はどこか遠い場所へと向かっている様だった。