僕の好きな彼女
それはそれでいい。
『片思い』の本質を僕は知った。
過ごした時間の長短じゃない。
束の間触れたその魂のかたちが、なにより僕は好きだったのだ。
そして彼女は、たったひとりで今、あの暗がりの中にあり、自分の命を絶った相手と対峙している。
それが彼女の望みなら叶えなければいけない。
でもそれと同時に、僕が僕の都合でその様子を見届けていたって、きっと良いはずじゃないか。
そう思った僕は、意を決して行き止まりへ向けて足を踏み入れた。
瞬間雪に濡れた靴がじゃりっと音を立てたので、そこからはそっと気をつけて歩を進めた。
二つ目の曲がり角の先で、建物と建物の間は幅一メートル程度しかない狭い路地になる。
そのどん詰まりが僕と彼女がかつて向き合った場所で、彼女が命を奪われた場所だ。
もちろん怪物は自分がしでかしたことでもあるし、当然にその場所の意味を理解しているはずだ。
そっと建物の角の中に目をやり、僕はそこをのぞき込んだ。