小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

僕の好きな彼女

INDEX|38ページ/68ページ|

次のページ前のページ
 

僕は一度彼女に頷いた。
声はかけなかった。
僕はそいつに向かって歩いた。
その時彼女が僕に手を伸ばした。
でも、
彼女は僕に触れることはかなわない。
彼女の手は僕にはけっして届かない。
ならば、
僕がすることは彼女との約束をただ守ることであり、まっすぐに歪みなく計画に乗ることだ。
だから僕はポケットの中から携帯電話を取りだして、『110』とプッシュした。
画面を彼女に向けて一度だけ突きつけた。
彼女の手がびくっと固まり、僕はそれを機とした。
「大丈夫。これはお守りで君が教えてくれた護身術だ。きっとうまくいくよ」
僕は彼女にそう告げて、怯えていないのだと言うように一度だけきゅっと自分の頬の肉をつり上げてみた。
笑って見せたつもりだった。
うまくいったかどうかははなはだ自信がないが、それが今僕に出来る精一杯だった。
作品名:僕の好きな彼女 作家名:匿川 名