僕の好きな彼女
7
彼女の肩の向こうに僕は目を凝らした。
波。
波紋。
ゆらぎ。
例えば水面の波紋に向けて、そばに石を投げたなら、別の波紋が丸く広がり、ふたつはやがて端から重なる。
彼女の中には何かが呼応しているのだろうか。
それまでにまして微動だにしない彼女の姿が、何だかひどく冷たく堅く、半ば青銅の像のようにすら僕には見えた。
それは彼女を中心にして『すう』と温度が数度下がるかのような感覚。
遅めの時間にやってくる電車にはそもそも乗車している人も少なく、ぽつり、ぽつりと年齢も年格好もばらばらな姿がわずかな影になって、出入り口から方々に向かい、てくてくと歩道を歩いては去った。
彼女はまだ動かない。
僕はその側に座り込み、聞こえない音に耳を澄ませ、見えない波紋を感じられないかと皮膚感覚を研ぎ澄ました。
だから、