僕の好きな彼女
まず空から降る雪を眺める彼女がそこにあり、それからまるで動く絵画を見るように、そんな彼女を僕は眺めた。
その彼女の視線が、ゆっくりと地上に降りた。
僕の見つめる先で、彼女の視線がさらに水平に動いた。
だから彼女は、そのまま僕から視線を逸らす格好になった。
彼女の顔が向かうのは、まっすぐ他でもない、駅の出入り口の方だった。
どくん、と僕の中でまた一度、心臓が大きく嫌な感じに跳ねた。
多分、この様子は、
きっと、
そうなのだろう。
僕に後ろ姿を向けたまま、小さいけれどはっきりした声音で一度、
「――来るわ」
と彼女が囁いた。