僕の好きな彼女
それが『怒り』であったり、『悲しみ』であると彼女は言った。
だけど僕は、そのさらに奥があるのではないかと思っていた。
僕自身、怒りや悲しみは、喜びや楽しみを圧倒的に超える、深くて強い感情だと考えている。
でも、彼女を見ているとその気持ちが、何らかの逆説的に揺らぐのを感じる。
感情の『極限』は実はそのいずれでもないような、そんな気持ちに襲われて、とらわれる。
缶コーヒーのプルタブを開けて、一口を喉に流し込んだ。
微糖という割には甘い味わいが、舌の付け根から扇形にじわりと口内に広がった。
束の間考え事をしている間に、僕の手の中でコーヒーはあっという間にぬるくなってしまった。
だから僕は残りを一気に飲み干して、小さな缶をゴミ箱に放り込んだ。
彼女の元に歩いて戻り、またその隣に腰掛けた。