僕の好きな彼女
「殺された人間として、そんなのは『絶対に違う』と思う。アイツは楽しんでたし、だから私は絶対に許したくない。
アイツは私に、『急病人がいる』って声をかけてきたの。それこそ真剣そのものといった風でね。
『119には連絡してる。僕が救急隊を案内して来るまで病人のそばにいて欲しい』ってね。
だから私は真に受けて、アイツと一緒に誰もいない『街角の死角』に行ってしまったの。
あの行き止まりで、アイツは何も言わずいきなり私に刃物を突き立ててきた。
『殺すこと』だけが純粋な目的だったんでしょうね。
相手なんてきっと誰でも良くて、単純に快感だったんだろうと思う。
だって、私は聞いたもの。
アイツは、笑っていた。
『へへへ』っていう押し殺したような笑い声を、私は確かに聞いたもの」