『人と人』とを越えた繋がりの先にあるものは…。 その二(完)
これもまた繋がりの一つとなるのだろう。
ひろみさん、ゆきの、調教師さんがいたから茶混じりモジャの所まで届いたという事だ。
すごいすごい。
繋がりがどんどん広がって行く。
そしてひろみさんから聞いていた話。
ゆきのの写真を見た時に、
『この子は家の子になるなぁ~。』
と直感で思ったと言う。
今こうして私がゆきのや茶混じりモジャと知り合ったのもその直感のおかげの上に成り立っているんだなぁ~と思うと、出会いって不思議だなぁ~とやっぱり思う。
初めてゆきのに会った日、この日初めてコスを連れて来たらしい。
でもコスは車の中でお留守番をさせられていた。
一時間もしなかっただろうか、五十メートル以上離れた駐車場の方から、鉄を掻(か)かじるような物凄い音がして、その音が聞こえた人たちはそっちを見ていた。
コスが開けてある窓の隙間から無理矢理もがき出たようだ。
一旦、お腹ら辺が引っかかったのだろう。
後でひろみさんの車を見たら傷だらけだった。
ひろみさんは笑ってたけど…。
コスはどうしてもこっちと参加したかったのだろう。
リードを付けて、ゆきのの所へと連れて行った。
ゆきのとコスが初めて会った瞬間だった。
コスは大きな生き物にビビッていたけど、ゆきのは何度もコスを見ていた。
忙しくしていたゆきのとほとんど話はしなかった。
でもこの日ゆきのと会う事で繋がった。
そして別の日にひろみさんがゆきのの所へと行く日、私の所にメールが来た。
『光(犬;ひかり)を連れて行こうと思うのですが、ゆきのは何て言ってますか?』
と。
私はゆきのに聞いてみた。
『・・・コスがいい。』
それをひろみさんへとメールした。
どうもゆきのはコスを気に入ったらしい。
でもコスはゆきのが苦手のようだ。
それもひろみさんに伝えた。
そしてコスを連れて行く事となった。
連れて行かれて、ゆきのから少し離れた所に結ばれている写真が届いた。
『何故?!』
と言いたげな姿だった。
なので私はコスに、
『ゆきのの為に我慢して。』
と伝えた。
どうしてゆきのの為に…という事になったのか。
初め私は、ゆきのからしか聞いていないので、ゆきのから伝わる事をひろみさんに伝えていた。
『前にいた所で、いらない馬扱いされた。』
とゆきのから聞こえた。
この事はひろみさんに伝えた。
私は驚いて、どんな目に合ったのか過去を探って行った。
いつ頃のゆきのかは分からないけど、大きな厩舎(きゅうしゃ)の中、仕切りがあって、たぶんそこが一頭ずつの小屋なのだろう。
その前を背の低い小太りのおっさんなのか、足の短いおっさんががに股で偉そうに歩いている。
そして片手にムチなのか分からないけど、床か壁かを叩き付ける音が聴こえた。
その音が聴こえた時、ゆきのと二人で凍り付いた。
そしてゆきのから、
『この人から言われた。』
と聞こえた。
なんとなくだけど声が聞こえる。
何て言ってるかまでは分からない。
ただわざと言ってるのがよく分かる。
そしてまたゆきのと凍り付いて怯える…。
みわさんからメールでゆきのを紹介された時に、ゆきのの表情が暗かったのはこのせいなのかと思った。
これはどうにかしないと…、私の出来ることは何かないか…と考えた。
ゆきのと出会ったのも何かあるとしたのなら、少しでも伝えられるのなら楽しく生きられる事を伝えようと思った。
だからと言って、見えてるこの事が事実かは分からない。
だからこれはひろみさんには言わずにいた。
こういうことがきっかけだった。
そして私は上の力を借りてゆきのと会話をする事になった。
それからひろみさんはゆきのの所に行くと写真を送ってくれた。
そしてゆきのから伝わる言葉は全然多くないけど、伝わる言葉をひろみさんへと届けた。
“どうして練習をするの?”
“もっとお話をして欲しい。”
“他の馬と仲良くしたくない。”
“ちょっかいを出してくる馬がイヤだ。”
などなどあった。
調教師さんの立場もあると思うので、あんまり口出しをするのはいかがなもんかと思っていた。
なのでゆきのには、
『調教師さんは良い人だから大丈夫。信じて!!ひろみさんを信じるの!!』
とか、
『そこでこれからずっと生活するんだから、他の馬と仲良く。デカい馬だけと仲良くはダメ。』
なんて伝えたりもしていた。
それ以外にゆきのの言葉ではないけど、小さめのゆきのが他の馬と一緒に走ってるのが見えた。
それを私が見るとゆきのから、
“お母さん。”
と聞こえた。
どうやら一緒に走っているのはゆきののお母さんらしい。
そんな事があって、どうなることやらと心配していたら、だんだんとゆきのから話し掛けられる回数が減って行った。
何故だ?!と思いながらゆきのに話し掛けるけど反応無し。
そのまま分からずがしばらく続き、久しぶりにひろみさんからゆきのの写真が届いた。
ゆきのの表情が違う!!
暗かった表情が明るくなったし、目も生き生きとして別人なくらいに変わった。
なるほど~こういう事かぁ~と私は納得した。
いろいろと上手く行ってるんだなぁ~。
なので私はひろみさんに、
『ゆきのはもう大丈夫なようですよ~。最近は話し掛けても反応ないので、こちらの手を離れたようです。いつもこんな風にだんだんと離れて行きま~す。』
というようなメールをしたら、
『そんな事ないです。』
とメールが来た。
誰かの命の為になってるんだったら…まあいっかと思えた瞬間だった。
そして最近のゆきのはこんな事を言う。
『(調教師さんの練習について)付き合ってあげてる。』
と。
ひろみさんに伝えたところ、それを調教師さんにも伝えたようで、調教師さんが、
『偉そうにっ!!と大笑いしてます。』
と届いた。
お母さんに馬の写真をあげようとアルバムにしていたら、モジャ馬の誰かがいきなり、
『ゆきのが好きじゃ~。』
と言って来た。
それをひろみさんに伝えたら、
『黒モジャの“好きじゃ~。”はタリちゃんですね。このお馬さんはおじさんです。』
と小さなポニーちゃんの写真が届いた。
この馬はゆきのの事が好きなんだなぁ~と思っていたらゆきのから、
『黒モジャ、付いて来る…。』
と言って来た。
『仲良くしてあげて。』
と私が言うと、
『気分次第。』
と返って来た。
『茶混じりは?!』
と聞いたら、
『遊びたくない時にちょっかい出して来るからイヤだ。』
と言う。
『茶混じりとも仲良くしようよ~。』
とは言ってみたけど、頑固な表情になった。
私はこの会話で思った。
ゆきのってわがまま・・・?!
まっ、そこはひろみさんが全部受け止めてくれるだろうと私は思っている。
また別の日にひろみさんから写真付きのメールが届いた。
『ゆきのがヘイネット(餌袋)を修復不能に壊してしまいました。どうしてでしょう…?!』
とあった。
えーーーっ!!そういう事を聞くかなぁ~と思っている私にゆきのがめちゃくちゃ申し訳なさそうに現れた。
『ママ~、ごめんなさ~い。』
と言って来た。
そのまま私はひろみさんへと伝える。
私はそのヘイネットが気に喰わないのかと思ったけど、ゆきのから伝わるのは、
『茶混じりモジャにからかわれた後の八つ当たり…に感じる。』
と伝えた。
ひろみさんから、
作品名:『人と人』とを越えた繋がりの先にあるものは…。 その二(完) 作家名:きんぎょ日和