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からっ風と、繭の郷の子守唄 第66話~70話

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 次の日から、大人も子ども力を合わせて、山を切り開きます。
 切り開いた土地へ、つぎつぎ桑の木を植えていきます。
 三年がすぎたころ、山には立派な桑畑ができあがります。
 どの家でも蚕を飼うようになっていました。
 村人たちはみんな、一生懸命に働いたので繭もたくさんとれます。

 「うそみたいやのう。」
 「みんなでよう頑張ったおかげや。」
 「式部さんのおかげや。」

 村の人たちは、暮らしが豊かになったことを喜び合います。
 繭からつむいだ糸で、布を織ることも覚えます。
 大雨で流された橋もできあがり、式部が丹後へ旅立つ日をむかえます。

 桑原の 里に引くまゆ 拾い置きて 君が八千代の 衣糸にせん

 歌を残し、なごりをおしみながら、式部は村を去ってゆきます。
 みんなが力を合わせたおかげで、桑畑はよくしげりました。
 だれ言うとなく、この村のことを、桑原と呼ばれるようになります。
 今でも桑原村のまんなかに、式部をしのぶ供養塔があります。
 村の人たちが、いつもきれいな花をおそなえしているそうです」

 「なるほど。
 日本全国にたくさんの織姫伝説と、絹発祥の逸話があるようです。
 ・・・さて、長い話をしているうちに、お昼が過ぎてしまいます。
 それでは、本日のメインイベント。
 焼きそばと焼きまんじゅうを食べに行きましょうか。
 太田市は焼きそばの街です。
 個性豊かな焼きそば店がたくさんあります。
 老舗のひとつで、黒い焼きそばを食べさせるお店があります。
 なぜ黒いのか、どうして黒いのか、それは食べてからのお楽しみです。
 ただしお嬢さん。
 美味しいもののためには、若干、行列する必要があります。
 覚悟のほど、よろしくお願いします」

 「さすがに群馬です。
 焼きそばと、焼きまんじゅうのために行列をするのですか!。
 はい!。覚悟のほどを、たったいま、決めました」

 「いいね、君のその『はい』というさわやかな返事は。
 何度聞いても、とても素敵な響きだ。」