からっ風と、繭の郷の子守唄 第66話~70話
からっ風と、繭の郷の子守唄(70)
「ヤキモチ焼きの白衣大観音と、ふたりの小指を結ぶ赤い糸」
伊勢崎市から郊外の道を15分ほど走ると、前方に高崎駅が見えてくる。
上越新幹線が停まる駅で、北陸新幹線の起点になっている。
千尋が見つけたのはその後方の丘陵地で、白い姿を見せている観音像。
「信越線の車窓から、よく見えます。
国道18号から何度も見上げましたが、まだ一度も、観音様の
足元まで行ったことがありません」
観音像は「白衣大観音」と呼ばれている。
市内のどこからでも見ることができる、丘の頂上に立っている。
高さは41.8メートル。重さは6,000トンのコンクリート製。
観音像の胎内を、肩まで登れる。
1936年(昭和11年)年に建立された。
慈悲深いまなざしは、人々の平和を見守っている印象さえ漂っている。
だが、康平が二の足を踏む。
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第66話~70話 作家名:落合順平