からっ風と、繭の郷の子守唄 第66話~70話
からっ風と、繭の郷の子守唄(69)
「食後の腹ごなしに、康平のスクータは群馬県内を東から西へと走る」
「悪いわねぇ。お昼は満腹になるまで、ご馳走になっちゃうし、
そのうえ。私の住んでいる安中市まで送ってくれるなんて、恐縮です。
JRの駅で降ろしてくれれば、いつものように、電車で帰れるのに」
「滅多にない機会です。
こいつ(愛車のフォルツァ)も、久しぶりの遠乗りを喜んでいます」
関東平野の最北に位置している群馬の地形は、きわめて変化に富んでいる。
県南の一帯には、標高50m前後の平坦地が広がる。
県都の前橋市と、隣接をする高崎市を北限に、山間地帯と山岳部がはじまる。
千尋の住む安中市は、群馬県の西部の丘陵地にある。
町の西は、長野県の軽井沢町と接している。
安中市役所で、標高が180m。
碓氷峠の登り口に当たる松井田町では、297m。
長野へ通じる『碓氷峠』の最高点は、960m。
群馬の西部は、先にすすむにつれて、標高があがっていく。
明治五年。群馬に誕生した富岡製糸場は、生糸生産の機械化をもたらした。
技術革新として、おおいに脚光を浴びた。
だがこれはまだ、生糸生産機械化のほんのさきがけに過ぎない。
ほとんどがまだ、座ぐり器を用いた手作業に依存していた。
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第66話~70話 作家名:落合順平