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幕間10分(悠里の章)

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「僕がグレッグと似てるって?」
 悠里は日本人だが、四分の一はアメリカ人だ。純系の日本人と比べたら少し色白で、髪の色も真っ黒ではない。信洋は彼女の言う共通点は外見でないのは分かっているから、質問の意味を聞きたかった。
「お兄ちゃんは、嫌なことがあると楽器に当たるんです。だから、何かやるせないことがあったのかな、って。あ、ごめんなさい」
悠里は信洋の顔色を見て話を途中で止めた。どうやら図星のようだ。顔に出やすいところがいい人なんだと思った。
「確かにその通りさ。でも――、高校生に聞いてもらうような話じゃ……」
「あたしだったら聞いても害はないですよ。仲間内で言いにくいことだったり、言ってスッキリするんだったら……」
「優しいんだね、キミ」
 反射的に返す言葉が出た。悠里が両方の掌を見せて悪意がないことを示すと信洋はにこやかに微笑んだ。

「僕さ、彼女とうまくいってないんだ――」堤はドラムセットに腰を掛けると、スネアを数回叩いた「同じバンドの中で付き合ってんだけど、何か通じなくて……」
バスドラムが2度、重い音を立てた。
「それに、今度ライブするんだけど他のメンバーの実力がべらぼうに良いので、こうして一人で特訓してるってわけ。ごめんよ。愚痴っちゃって……」
 今度はハイハットを入れて、基本のテンポを演奏し出した。言葉にしづらい気持ちをドラムに託す、その過程が兄と似ているところに悠里は、目の前の青年がへこんでいるのに心の中で親近感に似た何かを覚え、立ったままで口元が自然に外へ引っ張られた。

「気休めになるかは、分かりませんけど」ドラムのテンポがしばらく響いた後に悠里が声を出すと演奏がパタッと止まり、信洋は悠里の眼鏡のフレームを見ていた「あたしも似たような経験しましたよ」
「え……」
「ホントにココだけの話にしてくださいね」悠里はそう言って手を口に当てて少し吹き出した。

作品名:幕間10分(悠里の章) 作家名:八馬八朔