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からっ風と、繭の郷の子守唄 第61話~65話

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からっ風と、繭の郷の子守唄(62)
「シルクに魅せられた千尋が語る、インド旅行の想い出」

 「ここに嫁いだものの、家業にはつかず、教師を続けてまいりました。
 蚕種や養蚕に関しては、素人同然です。
 そんな私に座ぐり糸作家の、あなたの話を聞かせてください。
 お若い方がこの時代、わざわざ糸を紡ぐなんて、興味深々です」

 問われた千尋が、自分の生い立ちについて語りはじめる。
千尋は、和歌山県の海沿いの小さな町に生まれた。
18歳で京都・嵯峨野にある、美術学校へ進学する。
卒業旅行を兼ねた友人たちとのインドの旅行が、千尋に転機をもたらす。
手触りの良いインドシルクと呼ばれる、一枚のスカーフと出会ったことが
やがて、千尋の運命を大きく変える。

 「インドは28の州と、7つの連邦直轄地域に分かれています。
 言語の違いなどで、州が線引きされています。
 連邦直轄地域というのは州より小さく、ひとつの市だけの場合もあります。
 インド産のシルクは、北部にあるバラナシ地方で生産されています。
 私はそこで、原始の繭を使って生産する、『野蚕糸』と出会いました。
 『ムガサンシルク』と呼ばれています」