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レイドリフト・ドラゴンメイド 第12話 量子の藁の城

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 同じ車体を使い、先端に巨大なドリルを持つのは、岩盤突破戦車と呼ばれている物だ。
 また、土を押しのけるブレードを持ち、さらに円形の動力のこぎり、クレーンなどを積むのは森林突破戦車。
 岩盤突破戦車と自然突破戦車は、真正面から森に突っ込んだ。
 岩盤突破戦車は木や雪、岩であってもドリルで吹き飛ばす。
 森林突破戦車は動力のこぎりで木々を切り倒し、ブレードで押しだしていく。
 それに続いて、兵士たちは森へ進撃する。

 空から新たな轟音が追加された。
 レフコクリソス戦闘ヘリコプター隊。
 機体の左右に1つづつ、プロペラを大きなダクトで守ったダクティッドプロペラを持つ。
 プロペラに挟まれるのは、コクピットとミサイルやロケット砲をしまう部分だけの、卵型の機体。
 コクピットの下には、3つの銃身を回転させるバルカン砲があり、地上部隊の行く手を見守っていた。

 ダクテッドローターを4つ持つのは、シデーロス輸送ヘリコプター。
 機体内に人員や小型車両を積むため、全長は30メートルに及び、太い胴体を持つ。

 これらのヘリより少し上で、剣のような影が山肌をなめるように飛んでいる。
 スフェラVTOL戦闘爆撃機だ。
 VTOLとは、垂直に離着陸できる飛行機の能力のこと。
 2機で1チームを組み、山脈を登る地上部隊を全体的に守っている。

 さらに上空から、音速を超えた速度が生み出す、空間を切り裂く音。
 山脈を飛び越し、また戻ってくる、いく筋もの飛行機雲。
 アルギュロス戦闘機と、カルコス重戦闘爆撃機の大編隊だ。
 戦闘機が3機種とも、片方が壊れても無事に帰還するために、二つのエンジンを持つ双発式となっている。
 アルギュロスが比較的小型で小回りが利く。
 カルコスは超音速からスピードを落とすと、その巨体に寄り添った主翼を左右へ開いた。
 大型な分、航続距離も長く、しかも大量の爆弾を詰める。
 その分低速での機動力が弱くなるが、それを補う可変翼だ。
 チェ連では、陸海空軍での装備の共有化がとても進んでいる。
 この戦闘爆撃機達も、空軍の地上基地から発進した物もあれば、マトリックス海海軍が持つ空母から来たものもある。

 これらのさらに上空、16.700メートル。
 もはや地上から肉眼では小さな点にさえ見えないが、そこには3機の超大型爆撃機がきれいなV字編隊を描いて地のすべてを見下ろしていた。
 モリュヴドス爆撃機。
 翼の端から端まで165メートルあり、3角形の機体に尾翼を持たない全翼機。
 機体後部から見える円筒は、10のターボファン・エンジン。
 それが支えるのは、全長96メートルの胴体だ。
 その腹の中に納まるのは、合計80トンに達する各種爆弾やミサイル。
 機体の上下には、砲塔式の全方位レーザー砲が一つづつ。
 続くのは、空中給油機や、輸送型の編隊。
 これらにも、2問のレーザー砲は標準装備されている。
 チェ連の惑星全領域戦略を支えた、巨人機の群れだ。

 失われたはずの、マトリックス海方面軍。
 長年の宇宙戦争で失われ、魔術学園高等部生徒会により一日で敗北したはずの軍団。
 それが、全盛期の姿で現れた。

 先頭を行くモリュヴドス爆撃機が、取るに足らない不思議でもなんでもない動きを始めた。
 エンジンの噴射方向を無視して、上下左右に動き始めたのだ。
 まるで、特撮映画のCGスタッフが、「この爆撃機はどこに置こうかな? 」といじって悩んでいるような動きだ。
 結局、右後ろの爆撃機と衝突した。
 たちまち巨大な火の玉が生まれる。
 生き残った一機が、左へ傾いた。
 急いで逃げ出そうとしたためか、爆風であおられたのか。
 飛び散る2機分の破片と燃料、そして武器は、最後の一機を飲み込んだ。
 
「リモートハック成功。本当にここは、量子コンピュータの中なんだね。達美ちゃん」
 ワイバーンの脳は、無能力で17歳の男子生徒のそれだ。
 今はいているのは、学ランと略されることの多い、学生服のズボン。
 余談だが、学ランのランとは、洋服を意味する江戸試合の隠語、ランダからきたらしい。
 腰には大きい、たくさんのポケットがついている。
 明らかに学校の制服ではない。
 上着は脱ぎ、代わりに分厚く硬さを追求した黒いボディアーマーを着ている。
 その背中には、ドラドンメイドの背中にあった物より大きなレーザー・ジェット・エンジン。
 周りで折りたたまれているのは、これもドラゴンメイドより大きな翼。
 アーマーも翼も含めて、オプションのジェットパックなのだ。
 そして両手の指は放射線状に5方向に広がっている。アンテナだ。
 手の中から放たれるのは、コンピュータを正規のルートを介さず操るためのプログラム。それがリモートハック。
 今は16.700メートル上空にいる。ことになっているモリュヴドス爆撃機を操ったのだ。
 次は、空中給油型、輸送型を、最初の火が消えないうちに撃墜する。
 手を忙しく動かしながら、少年はちらりと振り返った。

 振り返った先にドラゴンメイドがしゃがんでいる。
 そこは、杉板を使ったログハウス風の部屋だった。
 煤けた鉄のまきストーブからは、空気穴からオレンジの炎が豊かに揺らぎ、乗ったやかんが忙しそうに蒸気を噴き出している。
 彼女らの足元には、それまでの激戦を物語る薬莢と、チェ連兵士たちがモノを言わなくなって転がっていた。
「ええ、タケ君。これを見て」
 足元の兵士の顔を、むき出しのチタンの手でつかむ。
 なんとなしにワイバーンに見せた。
 それは悔しさにゆがんだ血まみれのデスマスク……ではなく、真っ白な、鼻も口も目もない、作り物の顔だった。
 ヘルメットをかぶった下には、髪の毛もない。
「なんでこうなったんだろう。編美、分かる? 」
 ドラゴンメイドに言われ、倒れた兵士の顔をピンク色の猫型ランナフォンが覗き込んだ。
「わたしもそれが気になっていました」
 ディスプレーには、久 編美がオウルロードとして映っている。
 それはピンクの看護師服でも、ドラゴンマニキュア4Pでもなかった。
 銀色の西洋風甲冑。
 大きな目が特徴的なフクロウをかたどった兜は、口元まで覆っていて、表情を見せない。
 膨らんだ胸も、鋭くとがった鎧に包まれ、攻撃的なイメージを抱かせた。
 そして肩から下がったマントには、縁に太い関節が入っているのがわかる。
 マントはVRMMORPG監視システムたる編美が、監視プログラムから気配を隠す文字道理の隠れ蓑、また広げれば電子の大空を自在に飛び回る翼となる。

「おそらく、本物の兵士の精神をダウンロードし、訓練をさせる目的で作られたのでしょう。
 顔も、人間のデータを入れれば本物そっくりに変わるはずです。
 今までは、この世界全体をつかさどるメインプログラムのサポートを受けつつ、簡易な人口知能によって動いていたようですね。
 ただ……破壊されると、背景扱いとなって、メインプログラムへのアクセスが途切れるようです。
 中枢がどこにあるか、調べられなくなります。
 ですが、リモートハックによって動かすことはできますね」