からっ風と、繭の郷の子守唄 第56話~60話
からっ風と、繭の郷の子守唄(58)
「島村養蚕農家群の中核を占める、『清涼育』で知られる田島弥平旧宅」
「ここが島村の養蚕農家群を見る、絶好ポイントです」
康平が、ネギ畑のど真ん中でスーパースクーターを停める。
エンジンを止め、ヘルメットを脱いだ康平が運転席から降りていく。
フルフェイスのヘルメットを脱いだ千尋が、康平が指差す方向へ視線を向ける。
次の瞬間、千尋の口から短い歓声があがる。
悠然とそびえる赤城山を背景に、ネギの青い畑がどこまでも続いている。
その彼方。波のようにネギのうねりが続く先に、島村で中心的な役割を果たした、
田島弥平旧宅を含めた7棟の養蚕農家が、点々と連なっている。
屋根の上に越し屋根(この周辺では櫓(やぐら)と呼ばれている)
が載っている。
屋根全体に櫓(やぐら)が乗っている、総やぐらの造りの養蚕農家。
小さな屋根が3つ乗っている、3つやぐら造りの養蚕農家。
やぐらが2つ載っている養蚕農家が、交互に入り混じって佇んでいる。
総二階の建物は、1階部分が居住スペース。2階は蚕室として使われてきた。
最上部までの高さは8mから10m近くある。
一般住宅より少し高いことから、屋根の特徴が遠くからでもはっきりと見える。
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第56話~60話 作家名:落合順平