からっ風と、繭の郷の子守唄 第51話~55話
からっ風と、繭の郷の子守唄(53)
「山菜の天ぷらのあとには、目にも鮮やかな『おかひじき』のサラダ」
『美味しい~』を連発しながら、千尋が山菜の天ぷらを平らげていく。
本人が食いしん坊だと言うだけ有って、見事な食べっぷりだ。
ただし2品目から、手掴みでなくちゃんと箸を使い始める。
綺麗に握られている箸の様子に、康平の目がクギ付けになる。
「あら・・・美味しさにつられて、どうにも箸が止まりません。
駄目ですね、食いしん坊は意地汚くて・・・・。
あら、もしかして、箸の持ち方に注目されていますか?
私の食欲より、箸の持ち方に関心をお持ちのようですが・・・」
「失礼しました。綺麗な箸の使い方に、つい見とれてしまいました。
それく、とても正しい箸の持ち方です。
箸使いの基本は食べ物をつまみ、口元に運ぶときの所作が美しいことです。
正しい持ち方は、それだけで箸の機能をひきだしてくれます。
動き方にも無理がありません。
箸使いは、小さなうちに身につければどうということはありません。
しかし。大人になってからの矯正は、難しさがつきまといます。
正しい形と、正しい修練の積み重ねが、美しい箸の動作を生み出します。
それも例の呉服屋さんの時代に、身につけたものですか?」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第51話~55話 作家名:落合順平