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からっ風と、繭の郷の子守唄 第51話~55話

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 たらの木は、マッチの軸に使われる柔らかい木だ。
山野に自生して、4~5メートル前後の高さまで成長する。
地中を走る根から、どんどん繁殖をしていく。
春になると茎の先端に。ふっくらとした紅い新芽が出る。
この新芽を食用として採種する。

 最初の芽を採ってもすぐにその横から、また第2の新芽が出てくる。
第2の新芽まで採ってしまうと、その枝が枯れてしまう。
ゆえに山里では、最初に出てくる1番芽のみを食用として採種する。
以降に出てくる2番芽や3番芽は一切採らず、たらの木の成長のために
山野に残す。
山菜採りたちの、長年にわたる暗黙のルールだ。

 「こしあぶら」の木は、冷涼な場所を好む。
そのため自生地が限定されることや、20メートル以上の高木になることから、
たらの新芽とはちがい、採取は困難とされている。
木は柔らかい。、一刀彫や郷土玩具の材料などとしてよく利用される。
こしあぶらの木は低地の里山から、高山の林地まで自生する。
採取の期間はきわめて長く、奥山においては7月の中旬まで採取することが出来る。
里山で山菜が終了しても、高山のこしあぶらは、雪どけ時までが採取する
ことができる。

 こしあぶらは、花が開く「つぼみ葉」という姿から始まる。
つぼみの状態から、少しづつ葉をひろげていく。
書道では、使う筆の大きさになった状態を「筆葉」と呼ぶ。
この形に近い状態になったものが、こしあぶらの最上品と言われている。

 葉はさらに大きく育つ。
幼少の葉からは想像もできない、鳥の足のような「大葉柄」へ変化していく。
この大きさまで成長してしまうと、もう、このこしあぶらの木を山野の中に
見つけることは、山菜採りの名人でも困難になる。

 康平が、「こしあぶら」と「たらの芽」を、丁寧に水洗いしていく。
根元に残る木の皮状の部分を、包丁を使い綺麗に取り除く。
天ぷらの衣は、薄力粉へ10%程度の片栗粉を混ぜる。
小さじ一杯分の塩を入れたあと、卵を割り入れ、手早く冷水でかき混ぜる。
攪拌し過ぎると、粘り気が出てしまう。
粉が3分の1ほど残った状態で、攪拌は終わりにする。
最後に氷の塊を2個投入して、衣の準備が完了する。

 揚げ油は、天ぷらの香りを決定付ける。
ごま油や綿実油を、独自に配合している天ぷら店が多い。
味付けとして、椿油やオリーブオイルなどの植物油を、用いる場合もある。
康平の場合はごま油を多目に使用して、衣にこんがりと色が付くように
揚げていく。

 関西ではサラダ油を多めに使用する。
そのため、白っぽい衣の天ぷらになる場合が多い。
江戸時代、ごま油が高価であった頃は、天ぷらは庶民の口に入らなかった。
安価な菜種(なたね)油が普及したこっとにより、天ぷらの普及に加速度がついた。