からっ風と、繭の郷の子守唄 第51話~55話
からっ風と、繭の郷の子守唄(52)
「まるで押しかけ女房みたいです、と語る人は、実は根っからの食いしん坊」
「あら。ごめんなさい。
まるで押しかけた女房みたいですねぇ、わたしったら。
ペラペラ自分ばかり、おしゃべりし過ぎです。
なんでかしら。勝手にテンションがあがっりっぱなしです・・・・
私ったら」
千尋が、いつもと違う自分の様子に気が付く。
短い髪を激しく振った後、カウンターへ、真っ赤な顔をあわてて伏せる。
かたわらへ置いてあるつばの広い麦わら帽子を、そろそろと手探りで
引き寄せると、それを頭へすっぽり乗せてしまう。
小刻みに震えている千尋の両肩は、こみあげてきた気恥ずかしさと、
懸命に格闘している自分自身を、ものの見事に物語っている。
五六が用意してくれた野菜の中に、山菜の王者と呼ばれる
「こしあぶら」がある。
芽吹いたばかりの、「たらの芽」も入っている。
それぞれ極上品が、濡れた新聞紙に丁寧に包まれている。
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第51話~55話 作家名:落合順平