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からっ風と、繭の郷の子守唄 第51話~55話

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 「焼きまんじゅうは、蒸して作ったまんじゅうに竹の串を刺します。
 それを炭火にかけます。
 火に掛けている間、刷毛を用いてまんじゅうの裏と表へ、
 甘辛の味噌ダレを塗ります。
 味噌タレは、北毛(群馬県の北部)の寒冷地帯へ行くほど濃くなり、
 中毛や東毛(群馬県の中央と東部)へ行くにつれて、
 緩くなる傾向があります」

 「あら。味噌ダレにも地域の特色が出るの?。
 焼きたての温かいうちは軟らかくて食べやすいけど、冷めてしまうと
 噛みちぎれないほど固くなってしまいます。
 縁日などで、買った瞬間に食べるというのが、やっぱりベストかしら」
 
 「もともと、その場で食べるために生まれてきた、郷土食です。
 お土産用に焼く前のまんじゅうと、味噌タレを添えたものがあります。
 寒くなる頃が食べごろで、冷たい木枯らしが吹く中で、体を温めくれるので
 珍重されてきた歴史があります」

 「数年前に行った伊勢崎市で、1月11日の初市の日に、
 焼きまんじゅう祭りを開催していました。
 10数メートルもあるジャンボ焼きまんじゅうを、焼き上げていました。
 お正月を飾る風物詩だそうですね」

 「焼きまんじゅうの発祥は、幕末頃(19世紀中期)と言われています。
 前橋発祥説がもっとも有力なようです。
 他にも伊勢崎市や、沼田市の店舗などが真の元祖と名乗っています。
 それぞれ独立した起源であるとする見方もあります。
 そもそも焼きまんじゅうは、酒を家庭で造っていたころの副産物です。
 商売のために、誰かが発明したというものではないようです。
 老舗焼きまんじゅう店の当主でもある、原嶋熊蔵はその著書の中で、
 2代前にあたる勢多郡飯土井村(現・前橋市飯土井町)出身の原嶋類蔵が、
 1857年に、前橋で売り出したものが最初だと書いています。
 沼田市の東見屋饅頭店の創業は、1825年(文政8)とありますので、
 商売としての創業は、東見屋饅頭店の方が先のようです」

 「元祖騒ぎは、どこにでもある騒動のようです。
 伊香保温泉や草津温泉へ行くと、元祖の温泉まんじゅうが
 街中で乱立しています。
 どれが本当なのか試食しながら、お腹がいっぱいになるまで、
 冷やかして歩いたことがあります。
 『元祖』という言葉は一種のブランドです。
 お店の皆さんが、こだわる気持ちも良くわかります。
 テレビで『元祖』という看板を出してるお店が、よく取り上げられます。
 ブランドにことさら敏感な日本人だからこそ、『元祖』というブランドに
 より一層ひかれるものがあると思います。
 日本人て意外なほど、ブランドが好きだという統計がありますから」

 「千尋さんは、ブランド志向ですか?」