からっ風と、繭の郷の子守唄 第46話~50話
からっ風と、繭の郷の子守唄(48)
「大木へ滝のように降り注ぐのは、2000リットルを超える消毒液」
「親方。全部OKよ。いつでも発射、オ~ライね」
真っ白い歯を見せて、運転席でイスラエルのイチローが笑う。
団員たちが、消毒専用車の周囲へ集まってくる。
収納スペースから、劇薬を散布するときに用いる道具が取り出される。
農薬用の防護マスク。保護用のメガネ、膝まで隠れる長靴。
全身を覆うビニール合羽。きわめて厚手のゴムの手袋などなど。
次から次へと取り出され、団員たちに配布されていく。
「もう一度、確認しておく。
体調の優れない者や、疲労している者は、散布作業には参加しないこと。
女が居るからといって、格好をつけて無理することはない。
それから時折、風が急激に向きを変える。
油断するな。間違っても薬が届いてくる風下には立つな。
それからもうひとつ、これがもっとも大切なことだ。
散布作業をしている間は、絶対に、保護メガネと農薬用マスクを
外さないこと。
遠くに離れていても、飛沫やガスはどこからでも飛んでくる。
自分の身は自分で守ること!
いいな。わかったな!。頼んだぜ・・・・
こんなところでいいかな、長老。他に注意することがあれば付け加えてくれ。
なにもなければこれから全員で、消毒作業へかかる。以上だ」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第46話~50話 作家名:落合順平