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からっ風と、繭の郷の子守唄 第46話~50話

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 「康平くん。お久しぶり。
 人妻の美和子と朝帰りしたそうですね。けっこうやるじゃないの。
 ここへ来る前、美和子を駅まで送っていったけど上機嫌で帰っていきました。
 いまだにうまく付き合っているんだね、あんたたちは。
 あたしなんか、子連れで実家へ戻ってきて、まる3年。
 出会いを求めて消防団へ潜り込んでみたけど、いまどきの男どもは、
 草食派ばかりで、つまらないわ。
 お酒を飲まないどころか、タバコも吸わないし、ギャンブルもやらない。
 女にも興味を示さない。
 携帯で、ひたすらゲームとメールに夢中なんだ。
 最悪ですね。いまどきの10代と20代前半の男どもは」

 不満をまくしたてた美女が、消防の帽子を脱ぎ、頭を軽く振る。
蓄えられていた長い髪が、一瞬にして解放される。
黒髪が、ふわりと空中で乱舞したあと、美女の肩ごしに背中へ流れ落ちていく。
見事言える長い黒髪には、見覚えが有る。

 (あっ。思い出したぞ!
 映画『卒業』のチケットを届けてくれた、あの時の仲介役の女の子だ!)

 「お久しぶりね。その様子では、
 やっと私のことを思い出してくれたようですね。
 そうよ、あん時のおせっかいな女子高生よ」

 長髪美女が、肩が触れ合う距離まで接近してくる。
康平の目の前でかきあげた長い髪から、シャンプーの良い香りが、
漂よってくる。
(まいったなぁ。目がくらみそうな先制パンチが飛んできたぞ・・・)
康平の戸惑いを見透かしたように、さらに美女が追撃の一手を
仕掛けてくる。

 『暑いわねぇ。朝から』と言いながら、白い指が、
制服の第一ボタンへ伸びる。
ゆっくり外されていく制服の第一ボタンの間から、喉から胸へつづていく女の
キメの細かい白い肌が、チラリと見えてくる。
牡丹を外す手の動きが、途中で停まる。
停止した指の動きに誘われて、康平の目がよけいに指先に集中する。
美女の白い指のあいだから、成熟しきったことをしめす透き通った白い肌と、
メスの匂いが、これでもかとばかりに漂いはじめる・・・


 「こらこら。朝ぱらだというのに、いい加減にせぬか、お前たち。
 なんの騒ぎかと思って来てみれば、消防がポンプ操法を競うと
 躍起になっておる。
 お前らはお前らでこんなところで、胸など見せてイチャついておる。
 どうしたんだ。肝心のアメリカシロヒトリの消毒は?
 本題をそっちのけにして、朝から別件で騒いでおるとは
 何を考えておるんじゃ。
 まったく、今時の若いモノたちは」

 咳払いとともにふたりの背後へ、徳次郎老人が現れる。
驚いたのは長髪の美女の方だ。元へ戻そうとしてあわてて第一ボタンへ
手をかける。

 「あわてなさんな。
 それしきのことで康平が動揺するとも思えんが、たまには
 刺激もまたいいだろう。
 お前さんには男の経験がたっぷり有るだろうが、康平はまだ独身じゃ。
 女の経験はあまりないだろうし、免疫もない。
 今のところ、それ以上いじめるな。
 実はな、こいつには今、見合いの話が来ておるでのう」

 「えっ、本当なの?。康平くん。
 ・・・・お見合いの話があるの。それも悪くないわね。
 でもさぁ。それじゃ美和子が泣くことになるわねぇ。
 いいの、それでもあんたは」