お蔵出し短編集
私はふと立ち止まった。
そして自分の歩く歩道の右脇を見た。
そこには黒い建物があり、艶を持ち光る外壁は私の姿を鏡のように映し出していた。
私はそれで、右手を放してその壁に近寄った。
私の顔がそこにはっきりと映る。
私は自分の眼球型をしたふたつのセンサーに自分の右頬を映し、その状態を確かめようとした。
そこは赤くなり、痒みの中心が僅かに隆起している。
私はその様子をデジタル撮影し、ネット上に画像検索をかけた。
すると、答えはすぐに出てきた。
『アトピー性皮膚炎』
主にこれは人間の子供がかかる病で、大人になると治癒する率が高いらしい。
そして私の見た目は確かに大人だが、製造されてからは実はまだ三ヶ月と経っていない。
だから私は生後三ヶ月の赤子とある意味同義で、赤子の肌故に赤子がかかるモノを病んでしまった、と言う訳なのだろか。
だとすればきっとこれは設計者のミスに違いない。
なぜなら、そのような病を被る必然性は皆無であるし、被らせる必然性はこれまた皆無に違いないからだ。