お蔵出し短編集
暗い一瞬のフェイドアウトがまた起こった。
気が付いた僕はもう真由美の部屋のベッドにはいなかった。
白いタキシードに身を包んでいる。
そこは真っ白い空間、教会の中だった。
「透?」
声をかけられて、隣を見る。
そこにいたのは真由美だった。
真由美は真っ白な、輝くようなウェディングドレスに身を包んでいる。
オルガンの賛美歌が流れる。
だがそこには僕たち二人しかいない。
これが究極の真由美の希望だったのかも知れない。
ウェディングドレスは、よく見ると本当にかすかに輝いていた。
模様は曖昧になっていて、輝きの中で不鮮明に変化していた。
花のように見えたり、白無垢のような鶴の模様が浮かんでいるようだったり、とりとめが無く茫漠としている。
「教えてくれる?」
真由美が僕を見つめてそう言った。
僕は頷いた。
その時の事だ。