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第二章 サイドストーリーは突然に

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「ゆ、指輪? 私の!!」
「そうだよ」

「だって、さっき・・」
「さっき放り投げたのは別のものだよ」

「ひどい!人を騙して!」
と私が言うと急に悲しい顔をしたリョウセイさん
「・・・。」
「返して、私の指輪」

ほんの少し私の顔を見つめて、軽く溜め息をつくと
手のひらに指輪を載せて私の方に手を伸ばした

すぐさま彼のてのひらから指輪を取り戻すと
私はリョウセイさんにこう言った

「こんなことするなんて最低っ!」

今までほとんど無表情だったリョウセイさんの顔がまるで苦痛を感じたように一瞬歪んだ
でも、そんなことを気にしていられない。
早くヒロキのところに戻ろうと急いで歩き出したそのとき・・

「**子、ヒロキ君のことを、本当に ・・好きなんだね?」

少し落としたトーンで話すリョウセイさんの声が背中ごしに聞こえた
なぜかその声に胸を鷲づかみにされたような痛みを感じて歩けなくなった私

「そのイヤリングはあの時、撮影スタッフをまいて2人きりで散歩したときに
僕が選んだイヤリングだよね?とても似合ってるよ」

その声は私の真後ろから聞こえた まるでささやいているくらいの小さな声だった
思わず身体中に力が入って固くなっていくのを感じる

「あの時、あの撮影のあった日きちんと僕の気持ちを君に伝えておけばよかった・・
**子、もう君の心に触れることは出来ないんだね、永遠に・・」

言葉の最後はかすれて、ほとんど聞き取れないほどの声だ早く歩いて、ここから出なくちゃいけない
でも足が床にくっつけられたみたいに動かない!どうしよう

「さっきはあんなことをして本当に悪かった
君に会えた嬉しさと、隣りに彼氏がいるのを見てあせって・・」

「だからって!」
私はリョウセイさんを振り返って言った

「そうだな、何を言っても今さら遅いよな。
きっと、どんなに謝っても君は僕を許してはくれないだろうね
だけど・・本当にごめんよ。君を傷つけたこと、本当にすまなかった!
あせってしまったんだ。君の本心を確かめたくて
ヒロキ君からもらった指輪を・・使った・・。」

そこまで言ってから、言いよどんだリョウセイさん
「指輪を使って?私の気持ちを試したの?」

「そう。あのときは・・ああするしか思いつかなかったんだ。
ずっと待っていたんだ君を、なんどもここに来てそしてやっと会えた!
だから、ほんの少しでも、希望が・・あるのかどうか
すぐにでも君の心を確かめたかったんだ・・僕は・・」
「もう・・」

「ああ、分かってる。分かっているよ。もう。
こんなに悲しませてしまうなんて・・」
リョウセイさんの顔が今にも泣きだしそうな顔をしている
「リョウセイさん?」

「早く、戻ってあげなよ。彼のところへ
彼・・いい奴そうだよな。」

リョウセイさんは、ふっと笑うと私の肩を手で押して、
さあ行って・・と、うながした

「幸せに・・なんなよ」

私は彼の声を背中で受けてそのまま、ほんの少しだけ頷いてからもう一度歩き出した



彼のところへ




―― 「**子、あの投げた指輪は、
    僕が君に渡そうと用意してた指輪だったんだよ
  
  <ボン・ヴォヤージュ!>
    **子、良い旅を・・人生を・・
      君のこと、忘れないよ。ずっと・・ずっと・・」




     彼の瞳から、一筋

       涙のしずくがこぼれて落ちた




= FIN =


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