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カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅱ

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「USBに偽装したレコーダー、というのが本当のところじゃないのか」
 USBメモリ程度の大きさの録音機が存在することさえ知らない。美紗はただ首を横に振り、震えながら日垣の言葉を否定した。しかし、上官の冷たい声は、なおも辛辣な言葉を返してきた。
「自分がその場に残るより、レコーダーを仕込んだものを置いて出て、後から忘れ物をしたとでも言って回収に戻るほうが、よほど利口だったんじゃないか?」
 射るような目つきが美紗の挙動を探っている。美紗は、自分の身に起こったことを説明しようと口を開きかけた。しかし、焦るばかりで、言葉が出てこない。
「そのUSBはどこだ」
 日垣は、固く握りしめられた小さな右手をちらりと見やり、すぐに美紗の顔に視線を戻した。押しこもった声が詰め寄る。
「持っているなら出せ。指示に従わないなら、君はこの時点でクロだ」
 美紗は、催眠術にでもかかったように日垣の目をじっと見つめながら、右手をゆっくりと広げた。マニキュアも塗っていない手の中から現れたスライド式の記憶媒体を、日垣は素早くむしり取ると、それを一瞥して、自分の制服のポケットに入れた。
「レコーダーというよりカメラか? それなら、置きっぱなしというわけにいかないのも分かるな。何を撮っていた」
「そんなこと……してません」
 小さく掠れた声が、精一杯反論する。
「そのUSBメモリは、比留川2佐から渡されたものです。比留川2佐にお聞きになってくだされば……」
「中には何も入っていないんだな」
「はい」
「言っておくが、もしこの中に何らかのデータが入っていたら、君は虚偽の申告をしたことになるぞ」
 美紗ははっと体を震わせた。午前中、比留川から受け取ったUSBメモリの中身を、事前に確認していなかった。もし、以前にこの記憶媒体を使った人間が何がしかのものを残していたら、自分が相当難しい立場に陥るであろうことは、容易に想像できる。
「あ、あの……私は、まだ……」
 慌てて何か言いかけた美紗は、日垣の顔を凝視したまま、凍り付いた。