素直になれない
Episode.4
進藤が入社して2カ月が経った。
彼は相変わらず優秀で、もう既に昇格の噂が立ち始めていた。そのため俺が教育係として働くのも2週間程だった。
会社で顔を合わせることはあったが、関わることは以前と比べ、かなり減っていた。
しかし、あいつがうちに来て飯を作ってくれるのは変わらず、逆に俺との親交は深まるばかりだった。そんな頃俺は、自分の進藤に対する気持ちが何やら変化していることに気付き始めていた。
「進藤、今週末空いてるか?息抜きに、一緒にどこかへ出かけないか。」
「すみません。仕事が入っていて今週はちょっと難しいです…。足立さんからのお誘いはとても嬉しいんですけど…。」
「そうか。仕事なら仕方ないな。また予定の会う日にしよう。」
ここ最近、ずっとこの調子だ。進藤はさっきも言ったように優秀で、上司にも好かれている。俺なんかより毎日忙しくて、時間が全然取れないのだろう。それなのに毎晩の飯だけはどれだけ忙しくても作ってくれた。
しかし、その次の週も、俺は進藤を誘ったが「部長たちと食事に行くので。」と断られてしまった。俺だって、毎日のお礼がしたいのにずっとそんな調子だから少しもやもやしていた。
「部長たちと食事…ね…。」