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店長と店員の話




   *    *   *


 客の姿のなくなった店内では、店長と店員が話をしていた。
「……店長、今日のはどうして何もしなかったんですかー?」
 ぱたぱたと商品にはたきをかけながら、店員が言う。
「ん? だって別に何もしなくてもいいかなって」
「なんで? フラれちゃったじゃないすか」
 女の子走って出て行きましたよ。
 そんな事を言う店員に対し、楽しそうに笑う店長は視線だけを店員へと向けて呟いた。
「だって俺が弄らなくても繋がってたから……ね」
「……はあ。つまりはいつかくっつくと?」
「そうだよ」
 うなずいた店長が流れてきたファックスを破いて、はいと店員に渡す。
 それを受け取った彼は「いらね」と丸めてゴミ箱へ放り投げて、それから「想像つかねー」と呟いた。
「そうかな? わりとお似合いだと思うけどね」
 くすくすと笑う店長は、ならんで歩くふたりが見えているような表情をしながらうなずき、立ち上がる。
「さて、休憩行ってきます。一縷くんなにか飲みたいものとかあるかな?」
「……じゃあミルクティーで」
「はい了解」
 立ち上がりエプロンを脱いだ店長は、そのまま店の正面から出て行く。
 そんな店長をいってらっしゃいと見送った店員は、しばらくその出入り口を眺めた後に「やっぱりわかんね」と首をかしげていた。