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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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乙女たちの幻想曲 第2回 風の吹く場所へ

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 風美歌は、颯とその足元に頻繁に目をやりながら、森の中を進んだ。空は既に晴れており、さりげなく木漏れ日が差している。
 
 不安の中歩いていると、1本の木の下に何か白いものを見た。もっと近づくと、それは2体のガイコツだと分かった。それらは座ったまま少し体を動かしながら、口をカタカタと動かしている。17歳の乙女はその様子を見ると立ち止まり、小さく叫んで颯の手を一層強く握った。すると、彼は尋ねた。
「何が見えますか」
 彼女は答えた。
「が、ガイコツや。2人ぐらいおります」
 答えを聞くと、颯はつぶやくように言い始めた。
「お守りください」
 風美歌は、不思議そうに彼を見た。
「何言うてますの?」
「ご心配なく。先に進んでください」
 彼女は、彼の言うとおりにした。ガイコツたちのそばを通ったが、それらは2人に気付く様子もなく、口をカタカタ動かしていた。

 またしばらく歩くと、今度は少し離れた所に立つ木に、何か巻き付いているものが見えた。それは、薄紫色の体に、やや濃い紫色のまだら模様のある大蛇だった。その大蛇は、風美歌と颯をじっと見つめている。風美歌は再び立ち止まり、小さく叫ぶと颯の手を一層強く握った。
「何が見えますか」
 彼女は答えた。
「お、大っきなヘビが見える。こっち見とります」
 そのとき、大蛇が幹を離れ、2人の居る方向に移動してきた。風美歌は、思わず彼にぴったりと体を寄せた。
「お守りください」
 そうしている間に、大蛇が彼らに程近い距離にまで迫ってきた。風美歌は
「いや、いやや、来ないで、ほんま。」
 と言うと、大蛇から顔をそらし、目をきつくつぶった。すると、驚いたことに、薄紫色の大蛇はまるで風美歌たちが目に入っていないかのように、2人の目と鼻の先を通り過ぎていった。
 自分に何も起こらなかったと分かると、関西なまりの少女はぱちっと目を開け、隣にいる長髪の青年を心配そうに見た。彼にも傷が全くなかった。彼女に少しばかり笑みが戻った。
「ご心配なく。先に進んでください」
 彼女は、彼の言うとおりにした。
「それから、私に友達口調で話しても構いませんよ」