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からっ風と、繭の郷の子守唄 第40話~45話

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からっ風と、繭の郷の子守唄(44)
「いまどきの消防団には、イスラエルから来たイチローもいる」

 動力噴霧機を積んで現場へ戻ってきた康平が合羽のフード部分を外す。
帽子も脱ぎ、あらためて桑の大木を見上げる。
子供たちの通学時間はすでに過ぎている。
静まり返った通学路へ、アメリカシロヒトリの白い衣を全身にまとった
一ノ瀬の巨木が、黒い影を落としている。

 動力噴霧機は、農薬を散布するために使う機械だ。
殺虫や殺菌、除草などの目的で使われる薬は、人に対してはすべて有害がある。
害のないとされている農薬でも、悪い条件が重なると中毒症の症状がでる。
農薬を扱うときは、最新の注意で作業を進めることが大切だ。

 「いいか。農薬の希釈倍率を厳守すること。
 ちゃんとした計量用具で測り、基準の倍率で水と混合するんだぞ。
 今回のスミチオンの場合は、2000倍が基準になる。
 濃すぎれば、他の植物に害を与える。しかし、薄すぎれば虫に
 効かないことになる。
 段取りが肝心だから、しっかり準備して攻撃態勢へ入ること。
 援軍が到着するまではお前一人だから、こころしてかかるように。
 いいな、康平」