ギブアンドテイク【番外編】
花田さんが、「じゃあ、確かめてみようよ」と提案してきた。
「ただいまー……あ!花田ちゃんだ!」
「たきもっちゃん久しぶり!」
「ごめんね、急に呼び出されて。ほんとは駅まで迎えに行くつもりだったんだけど」
着ていたコートをソファの背もたれに置いて、由菜は洗面所に向かった。
いつものことだから、コートを拾ってきちんとクローゼットに収める。
花田さんが笑いをこらえているのが、背中を向けていてもわかった。
「……なんかいい匂いする」
「わたしがグラタン作ったの。遅くなるかもって聞いて、台所借りちゃった」
「あ、そうなの。ありがとう」
フライパンのふたを開けて、それがグラタンであるのを確かめた由菜は、花田さんに礼を言った。
彼女が一人暮らししていたころも台所に立つことがあったと聞いているから、それほどの違和感ではないのだろう。
早めの夕食にすることになり、オーブンレンジで焼いたら、チーズがほどよくとろけて美味しそうだった。
「勝手に食材借りてごめんね」
「ううん!おいしそう!いただきます」
「ーーん。めっちゃうまい!」
お世辞抜きでうまいのだが、「ほめちぎって」とあらかじめ指示されているため、オーバーに「うまい」と一口ごとに言った。
他に言うことないのか、とあきれられてる気がするが、……本心は少し違うから、言葉が思いつかない。
俺が半分くらい食べ終わったとき、かちゃん、とフォークを皿に置く音を由菜が立てた。
「え、たきもっちゃん、口に合わなかった?」
「……ううん。おなかいっぱい」
明らかに元気をなくした様子に、ーー俺がたえられなかった。
やってはいけないことをした。
「ごめん!」
少しヤキモチを焼いてくれたらいいと思って乗った話だけど、これはダメだ。
俺に対して、彼女が一番自信を持っているのは料理だから、それを下げるようなことはご法度なのに。
踏みにじってはいけないのに。
「ただいまー……あ!花田ちゃんだ!」
「たきもっちゃん久しぶり!」
「ごめんね、急に呼び出されて。ほんとは駅まで迎えに行くつもりだったんだけど」
着ていたコートをソファの背もたれに置いて、由菜は洗面所に向かった。
いつものことだから、コートを拾ってきちんとクローゼットに収める。
花田さんが笑いをこらえているのが、背中を向けていてもわかった。
「……なんかいい匂いする」
「わたしがグラタン作ったの。遅くなるかもって聞いて、台所借りちゃった」
「あ、そうなの。ありがとう」
フライパンのふたを開けて、それがグラタンであるのを確かめた由菜は、花田さんに礼を言った。
彼女が一人暮らししていたころも台所に立つことがあったと聞いているから、それほどの違和感ではないのだろう。
早めの夕食にすることになり、オーブンレンジで焼いたら、チーズがほどよくとろけて美味しそうだった。
「勝手に食材借りてごめんね」
「ううん!おいしそう!いただきます」
「ーーん。めっちゃうまい!」
お世辞抜きでうまいのだが、「ほめちぎって」とあらかじめ指示されているため、オーバーに「うまい」と一口ごとに言った。
他に言うことないのか、とあきれられてる気がするが、……本心は少し違うから、言葉が思いつかない。
俺が半分くらい食べ終わったとき、かちゃん、とフォークを皿に置く音を由菜が立てた。
「え、たきもっちゃん、口に合わなかった?」
「……ううん。おなかいっぱい」
明らかに元気をなくした様子に、ーー俺がたえられなかった。
やってはいけないことをした。
「ごめん!」
少しヤキモチを焼いてくれたらいいと思って乗った話だけど、これはダメだ。
俺に対して、彼女が一番自信を持っているのは料理だから、それを下げるようなことはご法度なのに。
踏みにじってはいけないのに。
作品名:ギブアンドテイク【番外編】 作家名:かずさ