ギブアンドテイク【番外編】
はじめましてだんなさん
【はじめましてだんなさん】side 高峰
結婚して最初の春の連休に、由菜の東京の同期が遊びに来た。
「こんにちは。たきもっちゃんの会社の同期の花田です。お世話になります、だんなさん」
「あ、どうも。高峰です」
「はは!たきもっちゃんも高峰じゃん。高峰くん」
花田さんは、二言目には親しみを込めた語調で、そう言って笑いながら手みやげをくれた。
新居の2LDKは、個室2つを寝室と物置にしていたのだが、俺が物置を整理してまともに寝れる場所にした。
……もちろん、自分のために。
「あれ、たきもっちゃんは?」
「あーなんか会社に。呼び出されて出かけちゃって」
「人気者ねえ」
お茶でも出すか、とケトルに水を入れてスイッチを入れた。
茶葉の分量はちゃんとさじで計る。
同居を始めて俺がお茶をいれたときに「なんでこんなにお茶っ葉入れてるのバカなの」と彼女に怒られてから決めたことだ。
「やっぱり、高峰くんが部屋を片付けてるんだよね。たきもっちゃんの部屋がこんなにきれいだったことないもんなあ」
ソファに座った花田さんが、ぐるっとリビングを見渡して言う。
由菜がまだ東京にいたときは、2週に一度のペースだったし、彼女はそもそも半日と部屋を保てない。
今だって、たまに出張とかで出て帰ってきたら、とても自分の家とは思えない。
「高峰くんの話はよく聞いてて、あーこの人たきもっちゃんのこと好きなんだなあ、たきもっちゃんも好きなんだろうなあとはずっと思ってたけど、結婚するって聞いたときはさすがにびっくりしたわ」
「……まあ、いろいろあって」
「たきもっちゃん、恋愛にはうといけど、直感力持ってるからね。高峰くん以外にパートナーいないって言ってたし」
人づてに彼女の話を聞くと、うれしいようで切ない。
学生時代からの相棒だからな。
恋愛うんぬんと言う方がムリなのかもしれない、とはずっと考えてる。
「俺のとあいつのじゃなんとなく好きの意味が違うんだよな……」
「え?」
「あー……こっちの話で」
なんとなくこぼした一人言を花田さんに拾われた。
……やたら目がきらきらしてるのは、いやな予感しかしない。
作品名:ギブアンドテイク【番外編】 作家名:かずさ