ギブアンドテイク【番外編】
花田ちゃんの訪問
【花田ちゃんの訪問】side 由菜
引越し前、冬が近づいたある月曜日に花田ちゃんを初めて家に招いた。
「おじゃましまーす」
「どうぞどうぞ。あー寒っ!」
「うわ……きったな」
部屋の明かりをつけたら、花田ちゃんがそうつぶやいた。
昨日、高峰が部屋の掃除してくれたからまだましなんだけどなーと言ったら、いまだかつてない視線を向けられる。
会社でそんなにボロ出してない分、衝撃かもしれない。
「お茶でいい?」
「うん、ありがと。ソファ座っていい?」
「どうぞー」
あと少しとはいえ使うだろうと、エアコンも掃除してもらったから暖房も快適。
食洗機から湯のみを2つ出して、ティーパック1つでお茶をいれた。
お茶菓子は行きがけに花田ちゃんがお団子を買ってくれてるけど、ごはんが先だな。
「……これは高峰くん必要ね。会社のデスクは物が少ないからごまかせてたのか」
ダイニングテーブルの上を片付けながら、彼女はしみじみと言う。
入社して配属されてすぐ、花田ちゃんにUSBの中身を見られたときに、「せめておおざっぱでもいいからフォルダ作ろうよ」と言われてから、パソコンの整理術は上がったけど。
検索機能があるから、必要な資料のキーワードを検索するだけでもともと効率は悪くなかったんだけど、紙媒体だったら、仕事どころじゃなかっただろうな。
「昨日のうちに作ったんだ。ピーマンの肉詰めと、ごぼうサラダ!ご飯は冷凍ので悪いけど」
「作り置きしまくりね」
「洗い物は減らすに限るからね」
作り置きも出来るだけラップとかを使って、特にフライパンは大きさによっては食洗機に入れられないから使わないようにしてる。
コップも皿も、割るたびにメラミンのを買ったから、落としてもたまにしか被害が出なくなった。
ほんと、わたしは文明に救われてるなあ。
「いただきまーす。ーーうん、おいしい!」
「それはよかった。中冷たくない?大丈夫?」
「うん大丈夫。……お料理教室ちゃんと行かなきゃな。忙しさにかまけてたらダメだわ」
花田ちゃんは実家暮らしで、あまり料理をしないからとお料理教室に通っているの。
回数制で時間が決まっているわけでないから、足が向かないらしい。
「じゃあ、今度は花田ちゃんが料理作ってよ!ね、そうしよ」
「えー……まあ、いいか。週末行くから、やるなら来週以降ね」
「うん。再来週の月曜日にしよう。じゃないと部屋に呼べない」
なんで?と目で聞いてきた花田ちゃんは、数秒後に納得したみたい。
「高峰くんも大変ね」と笑った。
花田ちゃんの手料理、楽しみだなあ。
【花田ちゃんの訪問・おわり】
作品名:ギブアンドテイク【番外編】 作家名:かずさ