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血と肉。

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6.
 私は彼女の内で母の姿を見つけました。
 顔を知らないはずなのに、けれども確かな容姿で私に微笑んでいました。私が誕生した時に捉えた母の姿が記憶の何処かにあったのでしょう。
 母の隣には父の姿もあります。祖父母も幾分薄い色の姿ですが、真実私の内の血に宿っておりました。周囲を見渡せば私と血と肉で繋がった人々が無数に存在しています。
 私は彼らの記憶と魂を宿して生きていたのです。
 悪い肉も血もありませんでした。ただ存在するだけで私は無数の愛を抱えていました。

 私の骨は白木の箱に入れられ、彼女の故郷の風習のように海に流されました。
 今頃きっと大気か大地か大海を構成する一欠片に融和しているでしょう

 彼女は暫く後に結婚し、娘と息子を設けます。
 螺旋の渦に抱かれて私は原初の光を知りました。
 原光景に見た物は喜びに包まれた彼女の顔。それは無上の光景でした。
 
 彼女の研究手記で私の村に関連する部分は彼女自身が破き、焼却していました。
 これでもう私の村に纏わる事実は永遠に秘されたままです。


 やがて半世紀以上の後に私は再び愛する人と出会えます。
 彼女にはやはり輝くような純白が似合っています。


 ――――愛する全ての者の元に光と幸が多くありますように
作品名:血と肉。 作家名:兎月