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ギブアンドテイク【後編】

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彼のとなり

side 由菜



何度思い返しても、実感がわかない。


「たきもっちゃん、ごはん行こう」

「あ、うん。ちょっと待って」

「はいはーい」


月曜日。

花田ちゃんに声をかけられて、キリのいいところをすぐに考え、切り上げた。

パソコンの中はファイルがデスクトップにあふれたりとごっちゃごちゃだけど、どうせ散らかすと思ったからデスクにはもともと物が少なくて、部屋ほど見てられない状況ではない。


「復活したね」


会社のビルを出てから、花田ちゃんはやさしく言った。


「先週飲んだとき、すっごい荒れてたじゃん。大丈夫かなって思ってたの」

「……うん。二日酔いになったけど」

「あれだけ勢いだけで飲めば、なるか」


どこかからかうように、でもやっぱり言葉の温度はあたたかい。

いちばん近い同期だからというだけでなく、彼女は大切な友達だから。

この前のおわびにおごると言って入った、いつもより少し高い値段設定のパスタ屋さんで、わたしは彼女に伝えた。


「高峰と、結婚することにした」

「そっか。おめでとう」

「ありがと。……たぶん、遅くても年明け前に、退職すると思う」


結婚報告より、退職というワードに、花田ちゃんの表情が険しくなった。

彼女の思うところは、なんとなく分かる。

わたしにはこの仕事はことの外合っていて、上司にも気に入られているから、辞めるのが惜しくないと言えばうそになる。


「せっかく入れた良い会社でもったいないけど、優先順位が決まっちゃったから」


それでも、他には変えられない。