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ギブアンドテイク【後編】

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左手薬指に指輪をはめた。


「ははっ!ぶかぶかだね」


指先を下に向ければ、するっと抜けそうな危うさ。

まあ、予想の範囲内だけど……笑われすぎて、ミスった気はする。

席を立って、俺は滝本の左側にひざまずいた。


「そりゃ、サイズを考える余裕もなかったし。でも、直してもらえるから。こっちに来たら、一緒に行こう」

「ふふ、そうだね」

「ーーね、よく見せて」


ダイヤモンドの価値は分からないけど、慣れない薬指の感覚にはにかむ彼女を見て、どうでもよくなる。

ダイヤモンドとブルーサファイアが寄りそうデザインは、一目ですぐに気に入った。

あの店員の彼女にも、「ブルーサファイアは純潔の愛という意味もあるんですよ。わたしは、とっても好きなんです」と太鼓判を押してもらった。


「このデザイン、すごく好き」

「やっぱり。青いもの好きだもんな」

「さすが、高峰はわかってるよね」


何気なく言われたことが、たまらなくくすぐったい。

持ち物、食器のデザイン、部屋の置物と、滝本の好みは誰より感じられる距離にいたからな。

そばにいれば、話し方や考え方も似てくるんだっけ。


「つけておくの、こわいな。戻しとこ」

「あー……ご飯すっかり冷めちゃったな」

「ほんとだ、あっためなおすね」


数分前にいた場所に舞い戻った指輪を見た。

幸せになろうね、なんて言わない。

一緒にいるだけで、幸せなんだから。