エースを狙え
年が明け、新人合同自主トレが始まった。
そこで初めて佐熊と喋った。
佐熊はネガティブな人見知りだった。
ドラ1なのに自己評価が凄まじく低い。まるで三浦とは真逆だ。俺も佐熊と高校時代に対戦したことは1、2回あるくらいだったので適切な評価が分からなかったし、何処かで甲子園に出ていないというのが引っ掛かっていたのかもしれない。
しかし、そんな見下した評価はキャッチボールをした瞬間に打ち砕かれた。
佐熊の投げる球には力があった。
それに加えてコントロールが抜群にいい。
俺は2球ほど抜けたが佐熊は一球も抜けなかった。
18U世界大会の時の三浦に比べても全然遜色がないくらいだった。
世代ナンバーワンは伊達ではなかった。
同時に背番号の事は完全に諦めた。
…俺は佐熊には勝てない…
そう悟った瞬間だった。