エースを狙え
春季キャンプ in 沖縄・天福球場
9:00
春季キャンプ初日。
最初は地元の人達による歓迎式が30分ほど行われた。
それが終わると俺達ルーキーによる自己紹介と今シーズンの目標を一人ずつ発表していった。
まずは俺からだった。
「プロの身体を作ってからシーズン最後の方で一軍で投げれればと思ってます」
俺としてはかなりのものだが他選手達からみれば無難すぎたかもしれないと思った。何故ならその後の立華達の目標が大きすぎたからだ。
立華の目標。
「開幕から一軍で新人王取りたいです！」
唐田の目標。
「絶対一軍の戦力になってみせます！」
中島の目標。
「一軍で記録作れるくらいに試合にでます！」
井上の目標。
「必ず這い上がって戦力になります！」
増田の目標。
「正捕手になる自信があるのですぐに奪い取って見せます！」
皆、何故そんなに大胆な事が言えるのかはっきり言って理解出来ない。立華の新人王の目標はルーキーだからともかく、他の目標は別に今年に拘らなくてもいいような気がする目標ばかりだ。まあ他人事なので別にいいのだが…。どっちかというと夢と言った方が正しいような気がするが。
俺は自分以外のルーキー達の目標(夢)を聞いているとナツさんに話し掛けられた。
「よう。そんな顔してどうした？そういえばサックの目標無難すぎたな」
「そうですかね？自分的には結構なハードルなんですけど…」
「アイツらみたいな目標の方がマスコミ受けするぜ？」
「そんなわざわざ自分から目立たなくても…」
「目立つのが嫌いか？」
「駄目ですかね…やっぱり」
「いいんじゃね？そういう考え方の奴って別に他にもいるし。ただプロ野球って見世物でもあるからビックマウスくらいの方がマスコミ受けはするな。成績が伴えばスター扱いだし」
「はあ…でも目標って今年ちゃんと叶えられそうな事じゃないですか？」
「まあな」
「何か凄い事言ってるのは分かってるけど…夢？って思っちゃって…」
「ああ、確かにな」
「ナツさんのルーキーの時の目標って何ですか？」
「俺？新人王だけど」
「どうでした？」
「無理だったね…見事にボコボコにされたね……思い出すだけでも嫌な事だ。でもあの時があったから俺は今ここにいるんだけどな」
「そうなんですか…」
俺もいつか挫折とかするのだろうか。
もうしてるような気もするが…。
そして2021年春季キャンプが始まった。