刹那にゆく季節 探偵奇談3
「そうだよ、インターハイ前の超強化合宿なんだ。ここの旅館のひとがうちの弓道部のOBなんだって」
弓道部は、先の県大会で男女とも団体戦でインターハイ出場が決まっていた。男子は個人で宮川主将を含む三名、女子でも二名が出場する。選手ではない一年生の郁らは大会はお留守番だが、この合宿には参加する。毎年、隣県の山すそにある旅館で寝泊まりし、近所の弓道場で行われる恒例行事らしい。
「大変だね」
「でも楽しみ~宮川主将と二泊だもんっ」
憧れの先輩と部活以外で一緒に過ごせるのだから、郁にとっては期待が大きい。
「宮川先輩って彼女いないの?絶対いるって。めちゃめちゃ男前じゃん」
「部活一筋だもん、絶対いないと思う!不愛想だし女の子の扱いなんて全くわかってなさそだもん」
「おいおい失礼だろ…」
「褒めてるんだよーそういうとこも好きなんだ~」
「あっそ。あんた幸せそーだね」
「幸せだよ、好きなひとがいると!美波は彼氏いるのになんでそんな冷めてんのか超不思議だわ~」
「はいはい」
とにもかくにも、合宿である。部活動の一環とはいえ、OBのおかげで快適な旅館で寝泊まりできるし、結構楽しいのだと先輩にも聞いている。郁は夏休みの始まりをわくわくして迎えたのだったが。
作品名:刹那にゆく季節 探偵奇談3 作家名:ひなた眞白