刹那にゆく季節 探偵奇談3
「あ、須丸くんいたいた!」
走ってきたのは一之瀬郁だ。小さい身体でちょこまか動き、岩の間を通り抜けてくる。
「一年みんなで写真とってんの、来て来て」
「俺なんていいから宮川主将撮ってこいよ」
「もう撮ったよ!見る見る?」
郁はるんるんしながら画面を見せた。バーベキューで肉を焼いている宮川がブレぶれで映っていた。
「こんなん盗撮やんけ」
「ち、違うもん!シーッ!」
漫才のような二人を見ていると、伊吹は身体から力が抜けた。
「写真撮りましょうって言えばいいのに」
恋してんだな、と微笑ましく思いながらそう言うと、郁は頭をぶんぶん振った。
「無理ですよ、もードキドキして…肝試しのときでさえやばかったんですから!」
「それ聞かなきゃと思ってたんだよ。俺のアドバイス通り押し倒したのか?ちゃんと」
「おまえら…」
「そんなことしませんって!」
でもいいことはあったんです、と郁は笑った。
作品名:刹那にゆく季節 探偵奇談3 作家名:ひなた眞白