刹那にゆく季節 探偵奇談3
夏だ!
ぎらぎらと、窓の外で太陽が輝いている。見下ろす町は陽炎の様に揺らめいており、眩暈がしそうなほどだ。教室の天井では扇風機が回っているが、あまり役にはたっていない。
ようやく補講が終わり、生徒たちはクーラーの効いている食堂へ向かう。
「あー天国だね」
夏休みに入っても、郁(いく)たちの生活はいつもと変わらない。
午前中は補講授業があり、これはずべての生徒が対象だった。午後はみっちり部活もあるし、当然宿題もたんまり出ている。友だちとも毎日顔を合わすし、本当に休みなのはお盆くらいである。高校生の夏休みは厳しい。遊びほうけることもできない。
「ねえねえ、わたし八月超ツイてるんだ」
「ウソー」
友人らがスマホを操って盛り上がっている。なになに、と見せてもらうと占いのようだった。
「えー占い?見せて見せて」
「これ当たるんだよ。郁は確か~…」
「水瓶座のO型!」
「あったあった。ほれ」
この夏はこれまでとは違う出来事に遭遇する予感です。
恋も勉強も、一波乱ありそう。でもピンチはチャンス!これを好転させてラッキーを呼び込むことができるかどうかは、あなた次第!
「なんか、よさげだよ?いいことあるかな」
にやにやしていると、背後に気配を感じた。大きな影が覗き込んでくる。
「またそんなエロいの見て」
「ぎゃっ!覗かないでよ!べつにエロくないよ、ただの占いだもん」
須丸瑞(すまるみず)だった。プリントの束を持って立っている。座っている郁から見上げると、電柱みたいだ。
作品名:刹那にゆく季節 探偵奇談3 作家名:ひなた眞白