ギブアンドテイク【前編】
彼にとっての彼女
side 高峰俺が滝本を初めて認識したのは、中学の入学式だった。
「高峰くん、プリント回って来てる」
「あ、わりー」
「ありがとー。新入生歓迎ピクニックかー」
名札と机に貼られた紙で主張されたフルネームから、名前はおぼえていなくても呼べた。
滝本は、席が前後なのもあってわりと話すようになった。
いっつも、机やかばんの中をごそごそ漁って物を出すなあとは、思っていた。
「家庭科の授業は、早速調理実習しますよー班で役割決めてね」
「お味噌汁に白米に、ほうれん草のおひたしか。分担どうする?」
「お味噌汁がめんどくさそうだなあ」
きっかけは、調理実習。
じゃんけんで好きな役割を決めて、結果として滝本と味噌汁を作ることになった。
二人一組で、チーム戦というわけだ。
「高峰くん、料理しなさそうだね」
「……滝本もしなさそう」
「えーわたし毎日つくってるんだけど」
俺はマジで出来ないが、その実力を知るまでは、彼女も不得意そうな雰囲気だったのだ。
作品名:ギブアンドテイク【前編】 作家名:かずさ