ギブアンドテイク【前編】
付き合いは長いが、気付かなかった。
「わたし、嫌みたい」
「……何が」
「たとえ色々がまんして彼氏が出来たとして、高峰が来れなくなるのは嫌みたいなの」
食器洗いも洗濯も、機械のおかげで出番は少なくなったけど、掃除は掃除機をまともに使えない彼女には一生無理だと思う。
それだけのためではないと思いたいが、少なくとも俺は必要なんだろう。
……うわ、期待してないときにいいこと言うなよ。
「……俺さ、もしかしたら地方に配属されるかもしれない」
「ん?ーーあ、仕事の話?」
「おまえはずっと東京だけど、もしそうなったら、ついてきてくれないか」
キッチンに立って料理していた手が、止まった。
「そんな仮定の話、まだ働き出してもないのに考えられるわけないでしょ。あーもーびっくりした!」
これ以上話したくない。
冗談にすることで、一線を引かれたのは嫌でもわかった。
また地雷を踏みかけたんだな。
「そうだな。はは、気が早すぎたわ」
「そうだよ。今から死ぬ気で卒論書かないと、内定もへったくれもないんだから」
「うわ、それガチでテンション下がる話題……」
卒論に追い込まれて、友達を含めても帰省する人は多くない。
滝本が作ってくれた年越しそばをすすりながら、俺は無理やりでも卒論を書いた。
大掃除しながら、年越しながら、滝本の家で論文に追われるとは、昔の俺がうらやむだろう。
「わたし、嫌みたい」
「……何が」
「たとえ色々がまんして彼氏が出来たとして、高峰が来れなくなるのは嫌みたいなの」
食器洗いも洗濯も、機械のおかげで出番は少なくなったけど、掃除は掃除機をまともに使えない彼女には一生無理だと思う。
それだけのためではないと思いたいが、少なくとも俺は必要なんだろう。
……うわ、期待してないときにいいこと言うなよ。
「……俺さ、もしかしたら地方に配属されるかもしれない」
「ん?ーーあ、仕事の話?」
「おまえはずっと東京だけど、もしそうなったら、ついてきてくれないか」
キッチンに立って料理していた手が、止まった。
「そんな仮定の話、まだ働き出してもないのに考えられるわけないでしょ。あーもーびっくりした!」
これ以上話したくない。
冗談にすることで、一線を引かれたのは嫌でもわかった。
また地雷を踏みかけたんだな。
「そうだな。はは、気が早すぎたわ」
「そうだよ。今から死ぬ気で卒論書かないと、内定もへったくれもないんだから」
「うわ、それガチでテンション下がる話題……」
卒論に追い込まれて、友達を含めても帰省する人は多くない。
滝本が作ってくれた年越しそばをすすりながら、俺は無理やりでも卒論を書いた。
大掃除しながら、年越しながら、滝本の家で論文に追われるとは、昔の俺がうらやむだろう。
作品名:ギブアンドテイク【前編】 作家名:かずさ