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ギブアンドテイク【前編】

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心外な。


「そんなこと言ったら晩ごはん作らないよ」

「それは困るなあ。ーーでも、俺が悪い男だったらどうするの?密室で2人きりじゃ、助けも呼べないよ」

「……考えたことなかった」


佐倉くんが静かに怒っている、気がする。

言われてみれば、世間一般では付き合ってもない男女が人目のつかないところで会うのはおかしいかもしれない。

何年も高峰と過ごしてきたから、考えてもみなかったけど。


「俺は変なことするつもりはないけど、ちゃんと気にして」

「……はい」

「飲み物買ってくる。なんかいるものある?」


佐倉くんの言葉に、首を横に振って答える。

玄関を出て行く音がして、ふっと力が抜けた。

……バカだなあ。


「今のはちょっと、こわかったな」


想像すると、ぞわっとする。

誰に対しても無防備なつもりはない。

ただ、今日高峰が来ないことが少しムカついただけで、佐倉くんを招いたのだって八つ当たりみたいなものだ。


「……やきもちか」