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ギブアンドテイク【前編】

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中学でもうわさになったことはある。


「関係ないよ。わたしは、誰とも付き合う気がないの」


改めて言われると、キツい。

言われたのは俺じゃないのに、岸本と同じ立場でフられた気分だ。

少しは言葉がつまってもいいと思うのに、パキパキさっぱりと言うから心を守ることを許さない。


「それは、恋愛に興味がないから、ですか」

「うーん……そういうわけじゃないんだけど、わたしの素顔を知って好きになる人なんていないから」

「……そうですかね」


作ったような笑顔。

まあ、2日と行かなかった滝本家はびっくりするほどに荒れるが。

ーー俺がいるってのに。


「だから、ごめんね。告白してくれたのはうれしかった」


うれしい気持ちが伝わる笑顔。

そんなものを見せられてフられても、諦めなんてつかないだろ。

なあ、岸本くんーーあれ、目があったぞ。


「……やっば」

「なんで盗み聞きしてるんですか」

「……まぐれだまぐれ」


彼女と別れてから声をかけてくれたことに心の中だけで感謝する。

いや、一番は見て見ぬ振りしてくれることだったけど。