ギブアンドテイク【前編】
彼女にとっての彼
side 由菜滝本という苗字をもつということは、高峰という苗字の常に後ろになる運命だったんだと思う。
「滝本」
「あ、ごめん。ありがとー」
数年来の席順で回ってくるプリントを、名前を呼ばれて受け取る。
高校生にもなって、彼の後ろにいるとは思わなんだ。
「中野くん。プリント回ってきた」
「おー、さんきゅ」
このクラスで次に近い苗字は、この中野くんと小池くんだった。
もはや、行すら他者を寄せ付けない。
田中とか高橋とかもっといるだろ!と思うのだけど。
「高峰、放課後」
「……あーはいはい」
作品名:ギブアンドテイク【前編】 作家名:かずさ