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ギブアンドテイク【前編】

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暇だし英語の予習でもしておくか、と教科書を開いたときに、ドアがノックされた。


「高峰くん」

「はい?」

「お父さんが代わってって。出てもらっていい?」


穏やかな笑顔で、とんでもないことを言う。

お父さんは高峰と会ったことがない。

いや、さっきテレビ電話つなぐときに一瞬だけ会ったけど。


「え?俺ですか?」

「え?わたしは?」

「高峰くんご指名なんだもの」


お母さんがきっと「高峰くんが電話つなげるようにしてくれたみたいでね」とか何とか話題に出したんだろう。

会ったことはなくても、部屋が片付いているのが彼のおかげなのはよく話す。

困った顔の高峰が、わたしを見た。


「……はい」


SOSかと思ったのに、彼は案外あっさりスマホを受け取った。

そのまま部屋を出て、電話に応じている。

取り残されたお母さんが笑った。


「兄妹みたいなのって話しても、父親は心配なのかしら」

「えええ……そっち方面の話」

「幼なじみでもないのに、頻繁に家に呼ぶからね」


まあ、確かにそうだけど。