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キミをわすれないよ

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僕の仕事は、機械を動かさなければならない。その為には、深夜の作業も必須になる。そして、僕はその作業にも従事している。

昼間の仮眠を終えて夕方の街に出かける。通勤の車の中で 天気の晴れたときは、夕焼けを見ながら頑張ろうと深呼吸する。雨降るときには、雨の旋律に心を和ませながら出かける。まだ薄い月が見送ってくれたり、早々と輝く一番星が見つめてくれたりするのも嬉しい。音の定まらない鼻歌も誰に遠慮することもない。

作業場に入ってからは、指示書と向かい合いながら、仲間と潤滑に進めていく。途中の休憩で軽い夕食を取り、息をつく。その頃は 明かりを点けた作業場で夜の暗さを天井付近の窓に感じるだけだ。
まだしらじらとも明けない暗い夜、僕らは作業を終了して帰宅する。
新聞配達の準備をする人たちもまだ目覚めていないのではないだろうか。そんな時間だ。

街は静かだ。
僕しかいないんじゃないかと思うほど、人肌のあたたかさも感じられない。
冷えた布団に温度を与え、包まるように眠りにつく頃、小鳥のさえずりを子守唄に聞く。
家族を起さないように数時間の安眠のときを迎えるのだ。

この日もそうだった。

遅めの朝に目覚めた僕は、街へ ただ必要な用事を済ませる為に出かけてみた。
あの静けさは、夢だったのかと思うほど音やものが動き出している。めまぐるしくて疲れてしまいそうだ。早々に帰宅したくなる。

「あれ?こんな店あったっけ?」
新しくできた店にしては、作りは古めかしく、以前からあったとは記憶の中にはない。
書店のような看板だけど、店先から見えるところには雑貨が並んでいるようだ。可愛い小物の並ぶような店ではなさそうだ。僕にとっては、興味をそそるにおいがする。
(少し早いけど、アイツにクリスマスプレゼントを買っておくか)


アイツといっても、僕の彼女ではない。歳の離れた妹だ。そうだ、アイツがいるから僕には彼女がいないのかもしれない。両親が働いていた所為で 友だちと遊んでいても何となく気に掛けていた。ときどきは、誘いを断ることだってあった。友だちに「シスコンか」と茶化されて恥ずかしかったが、それでも可愛い僕の妹なのだ。
そんな妹は、ちゃっかり彼氏なるものができて実に楽しそうだ。おまけに「彼女作らないの?」と言ってくる。馬鹿にするなと笑ってみせるが、まだいない。


作品名:キミをわすれないよ 作家名:甜茶