星屑サンタ
翌日。
25日は残ったケーキの在庫の山が意外とみるみるうちに減っていった。気分がいい。
午後を過ぎ、懐かしさはないが聞き覚えのある声で「あの~すいません」と男の声がした。
目の前の初老の男は昨夜の彼だった。思わず「はっ!」と息を呑んだ。
「驚かないでください。昨夜スーパーでケーキを売ってるとか聞いたもんだから、気分で来ちゃいましたここに」
「よく、ここがわかりましたね」
まだ私の顔は驚いていただろう。声も上ずっていただろう。
「いや、実は3件目なんですよ。あなたを探したくて」
「なにか?」
私は彼の目的に困惑して、昨夜のことを細かく思い出そうとした。
「いや、本当に気まぐれなんですよ。深い意味はありません」
そう言うと一枚の手紙のようなものを私にくれた。
私は仕事の同僚の目を意識して、背を丸めながら彼からもらった手紙を見た。
封がしてない招待状だった。
招待状
本日の夜 丘の上の公園
あたたかいコーヒーでもいかがですか?
とだけ書いてあった。
私は困惑と笑みとが入り混じった複雑な表情をしていたに違いない。
「何時に終わります?」彼が聞いてきた。
「昨夜と同じです」お断りするのでなく、正直に教えてしまった。
「じゃ お待ちしてます」
そう言うと、彼は手元にあったケーキの箱を手に取るとレジの方へ歩き出してしまっていた。
私は了解したわけではないが、つい「ありがとうございました」と彼に言っていた。
驚きの午後のスーパーの一コマである。
私はこのことを仲のいい同僚に言わないでいた。それはどこかで何かを期待してたのだろうか?なんだか不思議な展開に楽しんでるのは間違いなかった。